賃貸住宅の契約では、ほとんどのケースで住宅(火災)保険の加入を求められます。
「自分は単なる入居者で建物の所有者ではないのに、なぜ入らなければならないのか」と
疑問に思う方もいるのでは…?
◆賃貸住宅における住宅(火災)保険に入るべき理由◆
実は法律上は、賃貸住宅の入居者が住宅(火災)保険に加入しなければならない義務はありません。
しかし、現実には賃貸借契約を結ぶ際に、住宅(火災)保険の加入を求める賃貸物件が一般的です。
火事を起こしてしまったり、もらい火に巻き込まれたりすると、大家さんも入居者も大きな損害を被ります。
賃貸契約時に加入を求められる住宅(火災)保険は、こうしたリスクへの備えです。
理由①隣室からの火災被害は原則賠償を受けられない
重大な過失ではない失火によるもらい火で延焼してしまっても、火元の家に損害賠償を求めることはできないので
ご自身の家財を守るための補償は必要です。
理由②貸主(大家さん)に対して原状回復義務を負う
賃借人には、賃貸借契約によって、退去時に「原状回復する義務」が課せられています。
これによって、万一火災によって建物が焼失したり損害を与えた場合は、原状回復するための義務があり
それができない場合は損害賠償責任が発生してしまいます。
◆賃貸住宅における住宅(火災)保険の内容◆
賃貸住宅の入居者が加入する住宅(火災保険)は、「家財を対象にした火災保険」と「借家人賠償責任保険」、
さらに「個人賠償責任保険」を付加した3点セットがスタンダードです。
①家財を対象にした火災保険(家財保険)
自身の所有する家電、家具などの損害を補償するもので、これが賃貸の場合の火災保険の基本です。
補償される損害原因は、火災、落雷、爆発、水害、水漏れなどが主な対象で、
家財や現預金の盗難も対象となるのが一般的。
②借家人賠償責任保険
入居者が、火災や爆発、漏水などを発生させ借りている部屋に損害を与え、貸主に対する損害賠償責任を負ったとき
建物を原状回復するための費用が補償される保険。
補償対象は、あくまでも自身が借りている部屋に損害を与えた場合に限られます。
①の家財を対象にした火災保険(家財保険)の特約として加入します。
③個人賠償責任保険
日常の生活上で、過失により他人を死傷させたり、他人の所有物を破損してしまったりするなど損害を与え
法律上の損害賠償責任を負ったときに補償される保険です。
例えば、水漏れを起こして階下の家財に損害を与えた、自転車運転中に通行人にぶつかってけがをさせた場合
などが対象でけがをさせた相手への治療費や慰謝料、他人の所有物の修理費などが補償されます。
②の借家人賠償責任保険と同様、①の家財を対象にした火災保険(家財保険)の特約として加入します。
◆賃貸住宅の住宅(火災)保険加入時の注意点◆
①引っ越し時に重複加入しないように要注意
引っ越しをする際に起きてしまいがちなのが火災保険の重複加入。
引っ越し前に加入していた火災保険のことを忘れて、引っ越し先で新しい保険に加入してしまうケースです。
しかし受け取れる保険金は実際の損害額までなので、二重に加入しても2倍の保険金は得られず
無駄な保険料を支払っていることになります。
賃貸住宅の火災保険は2年間を目安とする場合が多いですが、引っ越し先で新たに火災保険に入るなら
それまでの火災保険は退去時に解約手続きをしましょう。
途中で解約した場合には、期間に応じた解約返戻金が支払われます。
②地震を原因とする火災は、火災保険では補償されない
地震保険は地震・津波・噴火による損害を補償する保険です。
地震を原因とする火災は火災保険でカバーされないため、補償が必要であれば火災保険とセットで加入します。
賃貸人が加入するのであれば、家財保険同様、自身の家財のために加入するということになります。
その際、補償額は家財保険の補償額の最大50%まで。
さらに地震による被害、倒壊の状態によって、補償額も変わってきます。
自分の家財の破損、流出などによるリスクを地震保険で賄いたいのか、保険料負担との兼ね合いで検討しましょう。